夜空に輝く星座には、それぞれ固有の神話があります。今回は、そんな牡羊座の発祥とギリシャ神話のエピソードをご紹介。星座について詳しくなりたいという方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。神話を知ることで、星座に関する理解が深まるかもしれません。
牡羊座のギリシャ神話
星座と深い関わりを持つギリシャ神話。そんな星座のエピソードが盛りだくさんなギリシャ神話の中には、12星座占いで有名な牡羊座にまつわる物語もあります。特に牡羊座の神話で有名なのは「命を狙われた兄妹の脱出」を描くものですが、なんとこの物語には「二人の従兄弟による強奪」を描いた後日談も存在します。
次の項目からは、そんな牡羊座にまつわるギリシャ神話を2本まとめてご紹介します。
牡羊座神話①命を狙われた兄妹の脱出物語
牡羊座神話の舞台は、ギリシャ中部にあるボイオティア。
この地を統べる王アタマスは、最初の妻との間にプリクソスとへレーという兄妹をもうけます。しかし、やがて二人は離婚。その後、別の女性と再婚しました。この後妻が非常に悪い女性でして、アタマスとの間に自らの血を引いた子が産まれると、血のつながらないプリクソスとへレーを疎ましく思うように……。
やがて後妻は、とある信託をでっち上げて二人の殺害計画を企てます。しかし、このことを知った前妻がゼウス神に「二人の命を助けて欲しい」と懇願。そこでゼウス神は、二人のもとに飛行能力を持つ黄金の牡羊を遣わせたのです。そう、この黄金の牡羊こそが、牡羊座の正体。つまり、牡羊座はただの羊ではなく、神様の力が宿った神聖な存在なのです。
黄金の牡羊が二人のもとに到着すると、兄妹は牡羊の背に乗り、空を飛んで脱出を試みます。しかしその最中、ヘレーは海に落下。兄のプリクソスのみコーカサス地方に到着します。その後、プリクソスは黄金の牡羊をゼウス神の生贄とし、残った毛皮をコーカサスの王に贈与。そして、ゼウス神は牡羊の手柄を讃えるために、牡羊座を夜空に浮かぶ星座に加えたのだそう。
牡羊座神話②兄弟の従兄弟による強奪物語
牡羊座神話二つ目の主人公は、プリクソスとヘレーの従兄弟イアソン。
イアソンはイオルコスという国の王子でありながら、そのことを知らずに遠い地で育ちました。やがて自らの出生を知ったイアソンは、イオルコスに帰還。すると、王位継承権を持たない叔父が国を支配していました。国を我が物にしたいと考えている叔父からすると、王位継承権を持つイアソンは邪魔者でしかありません。
イアソンの帰還を知った叔父は、イアソンを次のような言葉でけしかけます。「コルキスにある黄金の牡羊の毛皮を持ってくることができれば、汝を王として認めてあげよう」。叔父は、その旅がどれだけ過酷なものなのか理解していました。つまり、イアソンをコルキスに向かわせることができれば、生きて帰ってくることはないと考えていたのです。まんまと叔父を信じたイアソンは、アルゴ船に乗ってコーカサスを目指します。
過酷な旅ではありましたが、努力の甲斐あって黄金の牡羊の毛皮を手に入れることができました。目的の品を入手し意気揚々と凱旋したイアソンですが、両親が叔父に殺害されたことで、自らが騙されていたことに気付きます。両親の仇は打ったものの、訳あって王位を継承することは叶わず、別の地に逃れたのでした。
参考文献
沼澤 茂美, 脇屋 奈々代(2014). 『美しい星座絵でたどる四季の星座神話』. 誠文堂新光社.
宇宙科学研究倶楽部(2016). 『星座の神話と伝説がわかる本 著作』. 学研プラス.
アリエル・ガットマン, ケネス・ジョンソン, 他(2021). 『占星術と神々の物語』. 株式会社フォーテュナ.
著者不明“知ってるかな? 星座の歴史”. 福岡県青少年科学館(2006). http://www.science.pref.fukuoka.jp/tenmon/tenmon_jouhou/2006winter.html, (参照2023-03-28)
寺北早希“ 姫路科学館サイエンストピック科学の目”. 姫路科学館(2021). https://www.city.himeji.lg.jp/atom/research/manako/560_t.pdf, (参照2023-03-28)